醸造家のワイナリー通信

収穫、仕込みがピークを迎えています

ヴィラデストでは、今週が収穫・仕込みのピークでした。

今日は雨の隙間を縫って、最後のシャルドネを収穫していますが、これが終わるとあとはメルロとカベルネを残すのみ。9月中旬からはじまった作業に、ゴールが少し見えてきました。体力的にもキツくなってくる頃ですが、あとひとふんばり、気を抜かず、しっかりがんばります。


2020年は、暖冬で雪もほとんど降らず、萌芽が早くなると予想されました。しかし、4月になると気温が下がり、結局、萌芽は例年並みのGW中になりました。その後、天気は安定し生育も順調でしたが、7月になると連日のように雨が降り続き、日照不足や病気の発生が心配されました。ところが、8月になると一転して猛暑となり、晴れの日が続いたために生育の遅れを取り戻しました。9月前半は残暑が続きましたが、後半から昼夜の寒暖差の大きい秋らしい天気になり、ほぼ例年並みの時期に収穫を迎えることができました。


7月の長雨により一部に病気が発生しましたが、スタッフの懸命な作業により、ヴィラデストではほぼ健全なブドウを収穫することができました。夏の猛暑の影響もあり、例年より糖度や酸度は低めですが、2020年の気候を表現した味わいのワインになることでしょう。
いろいろな意味で、2020年は記憶に残るヴィンテージになりそうです。

収穫が近づいてきました

雨が少なく気温の高い8月が過ぎ、9月になっても暑い日が続いています。このおかげで、ブドウの熟度が一気に上がってきました。
写真はピノ・ノワールですが、すでにしっかりと色づいており、今年は例年より早めの収穫になりそうです。

昨日の夜は、私も理事として参画している「日本ワインブドウ栽培協会(JVA)」の“ウェビナー(ウェブ上でのセミナー)”に参加しました。講師は、バージニア工科大学の荷田瑞穂先生。ワイン用ブドウの病理学をフィールドで研究・実践されています。
バージニアがあるアメリカ東部は、カリフォルニアなどがある西部と異なり雨が多く、日本の気候条件に似ているため、我々にとって参考になることが多くあります。アメリカの最先端の情報を、しかも通訳を介さず日本語で講演いただけるのは、非常にありがたいことです。
バージニアでは、1990年代にワイナリーが増え始めたそうですが、当時は苗木の品質管理が厳密でなかったために、ブドウのウイルス蔓延を招き、ようやく最近になって状況が改善されつつあるとのことでした。日本においても、苗木の品質を向上、そしてワインの品質を向上させていこうというのが、JVAの活動目的のひとつでもあります。

コロナ禍の影響で、オンラインでの会議やセミナーは一気に普及しました。これまで荷田先生には、来日された際にお話を伺ってきたのですが、今回はアメリカから中継で(しかも先生がおひとりで操作して)、全国各地の会員がオンラインでセミナーを受講することができるとは、1年前には考えられなかったことです。コロナ禍によって、否応なく社会が進歩した点もある、と前向きにとらえたいです。

来週あたりからは、収穫、仕込みが始まり、息もつけぬほどの状況になりそうです。ブドウの状態は、今のところ順調です。2020年もすばらしいヴィンテージになるよう、ヴィラデストチームで一丸となって全力で頑張ります!

※例年は収穫ボランティアを募集しますが、今年は募集いたしません。
 ご了承ください。

ブドウが色づき始めました

最近の猛暑により、ブドウの成熟が一気にすすんできました。写真はピノ・ノワールですが、色づきが徐々に進んでいます。

ヴィラデストワイナリー周辺では、8月1日に梅雨が明けて以来、ほとんど雨が降っていません。ヴィラデストのブドウ畑に設置された気象観測装置によると、8月1日から15日までの雨量はわずか1mm。7月は毎日のように合計250mm も雨が降ったのに。本当に近年の気候は極端です。

7月の長雨でブドウ畑では、“べと病”や“灰色カビ病”などの病気がちらほら発生しています。さらに、8月になって雨が全く降らず高温な日が続いているので、ブドウの房に日焼けや縮果の症状も見られるようになってきました。今後は適度に雨が降ってくれることを期待しています。何事も極端は困ります。

異常な気候の中ではありますが、スタッフの懸命の努力により、今のところ、ヴィラデストのブドウ畑では病害による被害をコントロールできています。これから収穫まで、あと1、2か月の天候が安定すれば、今年も良い収穫を迎えることができるでしょう。

暑い日が続きますが、収穫までのラストスパート、頑張ります(熱中症には気を付けて、ですね)!

夏には “アロマティック・ホワイト”!

梅雨の末期に入り、毎日のように雨が続いています。これだけ雨が続くと「べと病」などの病気が心配されますが、なんとか無事に梅雨を乗り切り、本格的な夏の太陽が待ち望まれるところです。
その間にブドウは結実し、果粒は日ごとに大きくなりつつあります。この写真は、ヴィラデストで最も栽培面積が大きいシャルドネの若い実です。シャルドネは凝縮感のあるバランスの良い味わいや、落ち着いた香りから、幅広い料理に合わせることができ、ヴィラデストワイナリーを代表する白ワインになっています。

一方、ヴィラデストワイナリーでは、シャルドネに続く白ワイン用品種として、標高約850mというワイナリー周辺の冷涼な気候条件を考慮し、華やかな香りの「アロマティック系品種」の栽培に10年ほど前から取り組んできました。

まず、【 ソーヴィニョンブラン 】。フランスのボルドーやロワール、そして、ニュージーランドなど、世界で広く栽培されている品種です。ハーブやグレープフルーツのような香りが華やかで、標高が高く昼夜の寒暖差が大きいヴィラデストでは、溌剌とした酸味が特徴です。
次に【 ピノ・グリ 】。セミアロマティック品種とも言われ、少し控えめであるものの、あんずやリンゴのような香りが爽やかです。「グリ」はフランス語で灰色の意味で、果実の色は少しグレーがかったピンク。果皮から抽出されるタンニン分により芯のしっかりとした、バランスの良い味わいです。日本では北海道や長野県の一部でしか栽培されていませんが、世界中で人気が高まっています。
そして【 ゲヴュルツトラミネール 】。ライチやバラの香りが非常に華やかに感じられるワインです。

これらの品種は、ヴィラデストワイナリー周辺のような適度に冷涼な気候を好みます。日本はヨーロッパなどのワイン産地と比べると一般的に夏が暑いので、これらの品種はあまり多く栽培されておらず、なじみの薄い方も多いと思います。これからの暑い時期にぴったり! 華やかな香りと爽やかな味わいの「ヴィラデスト・アロマティック3兄弟」をぜひ、お試しください!

商品情報はこちらから
◆ ソーヴィニョンブラン
◆ ピノ・グリ
◆ ゲヴュルツトラミネール

ブドウの開花 ~“リアルな体験”の価値~

長野県も梅雨入りし、畑ではブドウが開花を迎えようとしています。この時期、ブドウの新梢はもっとも旺盛に伸び、雑草もみるみる伸びてきます。ブドウは開花からほぼ100日で収穫を迎えるのですが、これから3か月余りの畑の管理、そして天候が、その年のワインの質を左右します。ワイナリーのスタッフは既に真っ黒に日焼けして、元気に畑仕事に励んでいます。昨年の台風被害、今般の新型コロナウイルス感染症拡大と、辛い状況が続きますが、2020年は特によいヴィンテージを期待したいものです。

私の働き方に関しては、このところオンラインでの会議やミーティングが増えてきました。移動がなくて時間を有効に使えるので、これは新型コロナウイルスが収束したあとも残ってほしいことです。
また、先日は「オンラインワイナリーツアー」についての打ち合わせをオンラインで行いました。ワイナリーツアーの参加者には事前にワインを自宅までお送りして、私がワイナリーを案内する様子を各々自宅で画面越しに見ながら、ヴィラデストのワインを楽しんでいただくというものです。このように、これからはイベントも多様化していくのではないでしょうか。

新しい技術の利点は充分に活かして効率化したいものですが、一方では、効率化によって自由になる時間を利用して、“リアルな体験”をすることの価値も見直されるのではないかと思います。
私たちヴィラデストワイナリーも、美しい景色を眺めながらおいしい料理とワインを楽しんでいただける、また、非日常的で心からリラックスできる、オンラインだけでなく“わざわざ時間をかけて行く価値のある場所”であり続けられるよう、努力をしていきたいと考えています。

御堂地区での植え付けが完了しました!

新型コロナウイルスの拡がりを受け、ヴィラデストワイナリーはゴールデンウィークを含む2週間、カフェとショップを臨時休業しました。

臨時休業中には、ワイナリースタッフに加えて、カフェやショップのスタッフ、そして村山シェフも一緒に、御堂(みどう)地区の広大な新畑で約3,000本のブドウ苗木の植え付けを行いました。カフェやショップのスタッフにとっては、普段とは違う屋外での力仕事ですが、汗まみれ、泥まみれになって、みんな頑張りました!

この御堂地区の畑は、未来に向けて、ヴィラデストの新しい可能性を拓く畑になることでしょう。

そして、今年のブドウの樹の萌芽は、暖冬の影響で早くなるかと思われていたのですが、4月が低温だったこともあり、ほぼ例年通りの5月初旬になりました。萌芽したかと思えば、あっという間に新梢が伸び、雑草もどんどん伸びてきますので、畑仕事については、とくにコロナの影響もなく、例年と同様に忙しくなってきました。

 

ただ、今日は雨ということもあり、ワイナリースタッフは屋内で、2019年のシャルドネをビン詰めしています。昨年は夏が雨がちで心配しましたが、9月は一転して晴れて、昼夜の寒暖差が大きい、絶好の気象条件が続きました。そのため糖度が充分に上がり、かつ酸味もしっかり保持された、すばらしいブドウを収穫できました。2010年代でベスト3には入る、グッドヴィンテージといえるワインに仕上がりつつあります。2019年ヴィンテージのリリースは今年の初夏以降になりそうですが、ぜひご期待ください!

 

皆さん、しばらくは我慢を強いられる生活が続くと思いますが、ヴィラデストのワインを飲んで少しでも晴れやかな気持ちになっていただければ嬉しいです。

 

 

※ 別の日にビン詰めの様子を撮影した動画です。よろしければご覧ください。

ヴィラデストワイナリーYouTubeチャンネル より

 

ヴィラデスト初の貴腐ワイン ~誕生の裏話~

本日、ヴィラデスト初の貴腐ワイン < KIFU-CHARDONNAY 2018 > がリリースとなりました。

2018年は春から暖かく、夏は記録的な猛暑で、ブドウの成熟が例年よりかなり早く進みました。例年だと、シャルドネは9月末から10月中旬にかけて収穫します。しかし、この年は9月の頭で既にブドウの糖度がかなり上がっていて、2週間後ぐらいには収穫しなければならないという状態になっていました。収穫の順番としては、シャルドネよりも早生のピノ・グリやゲヴュルツトラミネール、ソーヴィニョンブランといった品種の収穫を先に進めていたのですが、シャルドネの収穫までの間、9月はとても雨の日が多く、裂果や病気の発生リスクが高まっていました。
そのような中、シャルドネの一部に灰色カビ病(botrytis cinerea)の発生が見られました。このbotrytis cinereaの拡がりは非常に速く、ほんの数日の間に畑のいたるところにどんどん拡大していきました。これまでせっかく順調に熟してきただけに、暗澹たる気持ちで30分くらい畑を呆然と歩きまわっていました。しかし、よく考えてみれば、ブドウが熟した状態で、うまくbotrytis cinereaがつけば、いわゆる「貴腐ブドウ」になるわけで。そして、気持ちを切り替え、9月末に健全なシャルドネのみを収穫して <ヴィニュロンズリザーブ> 用とし、botrytis cinereaのついたブドウは樹に残したまま、11月まで放置することにしました。

そんなある日、世界的な醸造資材メーカーの社長や技術部門の責任者などがヴィラデストを訪れる機会がありました。そして、貴腐ブドウをみてもらったところ、「これはいい感じで貴腐ブドウになっている」と言われました。さらに、「この酵母を使え」、「プロトコールを送ってやる」と非常に親切(商売上手?)に助言をしてくれて、彼らの帰国後にもメールなどでやりとりをしながら、貴腐ワインづくりを進めることができました。私自身、初めての貴腐ワインづくりだったのですが、まっとうな貴腐ワインに仕上がったと自負しています。

11月までブドウを樹につけておくことで、半分干しブドウのようになり、糖度はもとの状態の約2倍、40度以上になります。また、botrytis cinerea以外の病気にかかっているブドウもありますから、いったん収穫したブドウを再度、ワイナリーでスタッフがほぼ一日かけて選別をしました。このようにしてつくられる貴腐ワインは、普通のワインと比べると、同じ量のワインをつくるのに3倍から4倍のブドウが必要になります。

ヴィラデストの < KIFU-CHARDONNAY 2018 > は、色合いは濃い黄色で、はちみつや白い花、ドライフルーツを思わせる香りが広がります。粘性のある極甘口ですが、同時に酸味もありますので、バランスの良い味わいです。デザートワインとして、よく冷やしてチビチビと飲むのもよいですし、ブルーチーズや甘いものとあわせても最高です。

今年は自宅で過ごすGWですが、大切な人への贈り物に、ご自宅での“プチぜいたく”に、ぜひご活用ください!

https://villadest.shop-pro.jp/?pid=150542142

誘引作業が完了しました

ブドウ畑では、結果母枝(けっかぼし=今年の種枝)の誘引作業が終わりました。今年の冬は暖冬でしたが、3月になって雪が何度か降りました。4月は暖かくなったり寒くなったりで、芽吹きは例年より若干早く、連休前くらいになるかと予想しています。

畑にいると、世界が混乱の中にあることが嘘のような、のどかな春の風景です。改めて、普通にワインを飲んで食事をし、親しい人と楽しく過ごす時間のありがたさを感じます。各自が対策をしっかりとることで、一刻も早い収束を祈るばかりです。


現在、新しいブドウ畑の植栽も進めています。ワイナリーの周りに1000本弱、御堂の畑に約3000本。かなりの数なので、1か月程度かかりそうですが、未来に向けて、気合を入れて!植え付けます!

 

昨日は、まとまった雪が降りました

この冬はほとんど雪が降らなかったのですが、ここにきてまとまった量の積雪になりました。
でも、やはり春の雪です。今日は晴れて気温が上がり、どんどん溶けています。

今年の春は、東御市・御堂(みどう)地区の残り半分(約1.5 ha)にブドウを植え付ける以外に、ワイナリー周辺に残された最後と言っていい土地に、シャルドネを植え付けます。これでヴィラデストワイナリーがある丘の上は、ほぼブドウ畑で覆われることになります。この写真の位置に来ると壮観で、ワイナリー開設当時の風景と全く変わったなぁと、感慨深くなります。

 

そのワイナリー周辺で植え付けをする、新しい畑のブドウの成長を見守り、時には作業に参加し、そして5年後にはその畑からできたワインをお届けする「ヴィニュロン会員2020」の募集を開始しています!これから3月、4月にかけて畑の整備、苗木の植え付けを行います。

https://www.villadest.com/news/Vignerons2020/

 

剪定作業が順調に進んでいます

今年は暖冬で、ほとんど雪が積もることもなく、剪定が順調に進んでいます。

この辺りは、例年、雪は少ないものの寒く、作業する人にとってもブドウにとっても厳しい条件ですので、少し寒さが和らぐ2月初めぐらいから剪定を始め、3月上旬に終了すれば上出来と考えているのですが、今年はそれを上回るペースです。2月は日本ワイン関係のイベントが多数開催されていますので、私はワイナリーを留守にすることも多いのですが、畑ではスタッフが着々と仕事を進めています。

剪定で樹形を保つことにより、その年の収穫量や樹勢を調整し、そして樹が健康に保たれます。ブドウの作業の中でも、最も技術や経験が必要な仕事と言えますが、前年の剪定がどのように樹の生育に影響を与えたのか、また、数年後の樹形を想像しながらする作業はパズルを解くようで、とても面白い作業ともいえます。また冬の静けさの中で、黙々と作業をしていると、気持ちも落ち着いてきます。ただし、天気の悪い日はとても寒いのですが。

 

異常に暖かい冬になっていますが、これから始まるシーズンが天候に恵まれ、そして笑顔で収穫を迎えられるようにしたいものです。