醸造家のワイナリー通信

もうすぐ萌芽です!

今年は暖かい春で、ブドウの萌芽は例年より少し早めの、ゴールデンウィークの前あたりになりそうです。ただ、暖かいと言っても朝晩はまだ冷えますし、時には0℃近くになることもあります。あまり早く芽が出ると遅霜による被害のリスクも高まります。

また、数年前には出たばかりの芽をシカに食べられてしまうという被害もありました。自然相手の仕事なので、思うようにはなりませんが、できるだけの対策をして、うまく自然と折り合いをつけていかねばなりません。

 

芽が出る前には、結果母枝の誘引や石灰硫黄合剤の散布を行うのですが、その間にワイナリーでは2021年の赤ワインや2022年の白ワインをビン詰めしています。

2021年は夏が涼しくブドウの熟期が遅れましたが、9月中旬以降の天気が良かったので、特に10月以降の収穫になる赤ワインにとって良いヴィンテージになりました。

一方、2022年は暑い夏でした。9月の雨で結果的に例年と同じぐらいの収穫時期になりましたが、豊作で、アロマティック系品種の白ワインの香りが華やかなヴィンテージになりました。新ヴィンテージのワインは今年の夏頃から順次発売となりますので、ご期待ください!

 

 2003年の秋に初醸造をしたヴィラデストワイナリーは、今年創業20周年を迎えます。20周年を記念して、樹齢20年以上の古樹(ヴィエイユ・ヴィーニュ、V.V. )のみを使用して醸した「ヴィニュロンズリザーブ シャルドネ V.V. 2021」がワイナリーショップ、オンラインショップ限定で販売中です。

https://villadest.shop-pro.jp/?pid=173466621

 

写真はヴィラデスト最古(ワイン専用品種としては東御市内でも最古)のブドウの樹で、31年前、1992年に玉村が植えました。それぞれの樹の姿に個性と風格と歴史を感じます!

 

春がやってきました

“三寒四温”といいますが、暖かくなったり、寒くなったりしながら、ヴィラデストにも春がやってきました。

ブドウ畑では、剪定作業がほぼ終了しましたが、まだ大量の剪定枝の処分が残っています。それが終わったら、剪定作業で残した「結果母枝(けっかぼし)」の誘引作業を4月中旬頃までに行います。

ワイナリーでは、2021年ヴィンテージの赤ワイン、2022年ヴィンテージの白ワインを樽から出して、ビン詰めをするなど、少しのんびりしていた冬が終わり、急に慌ただしくなってきました。

2月に引き続き、3月もイベントへの出席などのため、東京出張が続きました。

325日には、羽田イノベーションシティの特設野外会場で開催された「和韻フライト2023 ~日本ワイン・ロックカーニバル~」に出展。多くのお客様とお話をしながらワインを楽しんでいただき、また、全国から参加のワイン生産者とも久しぶりに会うこともできました。「ロックカーニバル」と銘打っているだけに、迫力あるバンド生演奏もあり、大いに盛り上がりました!

今年、ヴィラデストワイナリーは創業20周年を迎えます。ボランティアの方々にお手伝いいただきながら苗木を植えたことを、つい最近のように思い出しますが、その時に植えたブドウの樹は立派に生長し、すでに風格を漂わせる姿になりました。畑の面積も約12ヘクタールまで拡がりました。

20年間やってくることができたのも、いつも応援してくださるお客様、地域の皆様、そして、日々がんばって汗をかいてくれている歴代スタッフのお陰です。

これまで培った蓄積を大事にしつつ、更に魅力的なヴィラデストへ進化を続けていきたいと思います。

冬の間、カフェやショップは改装工事をしていましたが、外壁を残して工事は終了し、41日より、リニューアルした新たな装いでオープンします。

皆さんと、ヴィラデストでお会いできることを楽しみにしています。

ぜひ、お出かけください!

 

春が近づいてきました!

ブドウ畑では、剪定作業が着々と進んでいます。畑は全体で約12ヘクタールありますので、作業は2か月近くかかります。昨年に伸びた枝を切り戻し、樹形を整えつつリセットし、今年の生育に備える作業。春近しと言っても、まだまだ寒い長野ですが、2023年のワインづくり(ブドウ栽培)はすでに始まっています。
2023年がよいヴィンテージになることを祈るばかりです。

 

2月は各地でワインの試飲ができるイベントが活発に開催されました。
2月11日には、ホテルメトロポリタン長野において、「GI長野ワインフェス2023」が開催されました。3年ぶりの“リアル”での開催となり、多くのお客様にご来場いただき、大いに盛り上がりました。造り手とお客様が会話をしながら、多様な“長野ワイン”を楽しんでいただける素晴らしい機会になったと思います。

 

また、2月17日は、京王プラザホテル札幌で開催された「2023プラザワインヘリテージ vol.8」に参加させていただきました。
北海道の約30のワイン生産者とチーズ生産者が一堂に会するイベントですが、今回は本州からワインはヴィラデストワイナリー、チーズは岡山県の吉田牧場さんが特別参加。多くの北海道のワインの中で、ヴィラデストのワインも提供させていただき、“テロワール(風土)” の違いを感じていただけたのではないかと思います。
北海道の旧知の生産者、そして新しい生産者とも交流させていただき、私自身も楽しませていただきました。

 

さらに、今週末2月25日には、2022年9月から延期になっていた「東御ワインフェスタ2022」が開催されます。やはり、ワインを飲みながら、ワイワイガヤガヤと楽しむのが一番ですね。こちらも、長い冬を越えて、春が近づいてきたようです!

 

 

遅ればせながら、今年もよろしくお願いします!

今年のお正月は雪が少し降った程度で、穏やかな新年を迎えています。

この3年間は、新型コロナウイルスの感染拡大によって、ワイナリー業界、飲食業界は大きな影響を受けました。しかし、そのような状況の中で、オンラインを利用したイベントの開催や、動画やSNSを活用した情報発信、新しい販路の開拓や業務の見直しなど、困難な状況だからこそ、新たに取り組めたことも多かったと思います。
今年は新型コロナウイルスとの「共生」が本格的になり、経済活動は徐々に“コロナ前”に戻っていくものと思われますが、この間に学んだことを活かして、より進化したヴィラデストにしていきたいと考えています。
そして、今年はヴィラデストワイナリーが20周年を迎えます。少し年季を感じるようになった建物の改修を冬の間に進め、ショップやカフェは4月1日からリニューアルオープンの予定です。
20周年を記念したワインもいろいろ準備していますので、ご期待いただければ幸いです!

ヴィラデストワイナリーが20年前に開業した時には、東御市にワイナリーはヴィラデストのみ。ワイン用ブドウ畑も合計で1ヘクタールに満たないほどだったと思います (玉村が1992年に植えたのが最初です)。それが、今では東御市内にワイナリーが13場、ワイン用ブドウ畑は60ヘクタール以上になりました。
長野県全体で20以下だったワイナリー数も、昨年には70を超えましたし、日本全体では200以下だったワイナリー数は400を超えるまでになりました。
私たちも、現在では畑を約12 ヘクタールまで拡大し、また、“兄弟ワイナリー” のアルカンヴィーニュを設立して、2015年からは「千曲川ワインアカデミー」を開催するなど、千曲川ワインバレーや日本ワインの活性化に多少ながらも貢献することができたのではと感じています。

この20年間、特に直近の10年間で日本ワインの品質や認知度は大きく進化し、イメージもよい方向に変わってきたと思います。
また、この20年間で日本の物価はほとんど上がらず、円安も進行しましたので、海外のワインとの価格差は縮小しています。日本ワインの品質向上とあわせて、日本ワインの競争力は高まっていると言えるのではないでしょうか。また、海外から重たい瓶に入ったワインを輸入するより、日本で日本のワインを楽しむ方が、CO2排出量削減など、SDGsの観点からも良いように思います。
さらに、GI(Geographical Indication:地理的表示)制度も日本ワインの大半をカバーするようになり、今後、国内だけでなく海外に向けても、日本ワインをアピールしていくチャンスだと思っています。

このように盛り上がってきた日本ワインですが、この盛り上がりを更に高め、持続的に発展していくためには、個々のワイナリーが努力をすることはもちろんですが、業界がまとまって各方面へ日本ワインをアピールしたり、機械や施設の共同利用で効率を高めたり、日本の気候風土にあった品種を海外から新たに導入したりするなど、各地域、そして、全国レベルでまとまって協力することの重要性がますます高まってきそうです。

直近では、2月12日(日)に長野県ワイン協会主催の「GI長野ワインフェス2023」がJR長野駅ビル直結のホテルメトロポリタン長野で開催されます。
また、2月25日(土)には、東御ワインクラブ主催の「東御ワインフェスタ」が、しなの鉄道 田中駅近くのラ・ヴェリテを会場に開催されます。
そのほか、ワイン業界では少し時間のある冬場に、行政や有志主催の勉強会も活発に開催されています。
このような日頃の地道な積み重ねで、一歩一歩前に進んでいくことが大事なのだなと、新年を迎えて、あらためて感じています。

 

 

2022年も残すところあと僅かになりました

12月前半は比較的暖かい日が続きましたが、中旬からぐっと寒くなってきました。
本格的に寒くなる前に、ブドウの樹の防寒のための藁巻きはなんとか完了し、ブドウ畑への堆肥の散布もあと少しで完了します。
シードルの仕込みも終了し、なんとか無事に年末年始を迎えられそうです。

 ▲ 御堂地区の畑 ▲ 八重原地区の畑

 

今月は、長野市、軽井沢、白馬村、東御市(湯楽里館ワイン&ビアミュージアム)でのイベントなどもあり、バタバタしているうちに、あっという間に今年もあと10日足らずになりました。

今年は、一年を通して不安定な天候が続きましたが、10月の後半からは秋晴れが続き、難しい年ながらも全体的に健全なブドウを収穫することができました。
この年の気候やスタッフの努力を反映した、2022年ヴィンテージのワインをご期待ください。

ワールドカップを見ていると、世界の多くの地域ではコロナはもう過去のことになりつつあるように感じました。来年は日本でも本格的に日常生活を取り戻すことでしょう。この3年間の“試練”の中で学んだこと、進歩したことも多いですから、これを糧にして前進していきたいものです。

2003年にワインの製造を開始し、その翌年の春からカフェやショップの営業を開始したヴィラデストワイナリーも、来年には20周年を迎えます。この冬の間にカフェやショップの改装を行い、来春には一新した装いでみなさまをお迎えしたいと考えています。

2022年もヴィラデストをご愛顧いただき、ありがとうございました。
よいクリスマス、そして新年をお迎えください!!

収穫・仕込みが完了し、畑は冬支度。そしてイベントです!

11月2日に最後まで残っていたカベルネを収穫し、2022年ヴィンテージの仕込みも完了しました。

今年は収穫直前の9月後半に台風の影響で雨やどんよりとした曇り空が続き、なかなかブドウの熟度が上がらなかったのですが、10月10日ぐらいから天候が回復し、それ以降に収穫したシャルドネやメルローなどは期待できそうです。
ソーヴィニョンブランは糖度が少し低めだったのですが、若干早めの収穫のほうがアロマティック品種は香り高いワインになると言われます。また、ピノ・ノワールは、一部の畑で早めに収穫をして、初めてロゼワインとして仕込みをし、その後に熟するのを待って収穫したブドウはしっかりとした赤ワインにしました。
気まぐれな天候ではありましたが、状況に応じて臨機応変に対応できたのではないかと思っています。2022年ヴィンテージのワインは来春以降の発売になりますが、今からご期待ください!

 

現在、ブドウ畑では本格的な冬が到来する前に、ブドウの樹を厳しい寒さから守るための藁巻き、また、牛糞とブドウの搾りかすを発酵させた堆肥の施肥を行なっています。長野県の寒い冬を乗り切るための、根気が必要ですが、とても大事な作業です。

 

今年も、春ごろにいったん復活しかけたイベントも、夏以降は中止や延期が続きましたが、先日11月19日には東京でイベントが開催されました。
日本ワインの生産現場を取材して製作されたドキュメンタリー映画「Vin Japonais (ヴァン・ジャポネ)」の公開を記念した、「ヴァン・ジャポネ・フェス 2022」。全国から36社のワイナリーが集まりブース出展をし、盛り上がりました。やはり、リアルでないと伝わらない、造り手と飲み手の交流があると実感しました。今後はオンラインの利点も残しながら、いろんな形のイベントが開催されるのではないでしょうか。

 

さらに、11月4日から、映画「シグナチャー~日本を世界の名醸地に~(柿崎ゆうじ監督)」の公開が始まっています。
私のワインの師匠でもある、麻井宇介(浅井昭吾)先生の想いを受け継ぎ、「日本を世界の銘醸地に」するために奮闘する醸造家・安蔵光弘さん(メルシャン)の半生を描いた映画なのですが、私、小西も脇役ながら麻井先生の想いを受け継ぐものとして登場いたします(もちろん、小西役の役者さんが)。
本作はニース国際映画祭にて最優秀作品賞を受賞し、安蔵さんの妻・安蔵正子さん役を演じた竹島由夏さんは、パリ国際映画祭にて最優秀女優賞を受賞されました。
12月3日には、長野ロキシー(長野市)にて安蔵夫妻、柿崎監督と一緒に小西も舞台あいさつに登壇いたします。全国各地で公開中の「シグナチャー」、ぜひご覧になってみてください!
https://www.signature-wine.jp/

 

 

12月7日(水)には、軽井沢のホテルインディゴ軽井沢様にて、ヴィラデストメーカーズディナーを開催していただきますし、12月17日(土)には「ヴィラデスト メーカーズディナー in 湯楽里館ワイン&ビアミュージアム」を開催いたします。

この冬は改装工事のため、少し早めの12月5日(月)からヴィラデストカフェがお休みになりますが、軽井沢やワイン&ビアミュージアムへもおでかけください!
★ショップは、年内12月22日(木)まで、通常どおり営業予定です。

来年、2月、3月には、各地でイベントが計画されています。
詳細は後日お知らせしますが、各地の皆さんとお会いできることを楽しみにしています!

 

<イベント情報>

◆ヴィラデスト メーカーズディナー(ホテルインディゴ軽井沢)

◆ヴィラデスト メーカーズディナー in 湯楽里館ワイン&ビアミュージアム

◆観光列車「ろくもん」クリスマス特別プラン(しなの鉄道)

 

収穫、仕込みも終盤戦です!

本日でワイナリー周りのシャルドネの収穫、仕込みが完了しました。あとは、ワイナリー周りのメルローを残すのみとなり、9月中旬から始まった収穫、仕込み作業もようやく終わりが見えてきました。

今年は収穫前の9月中旬から後半にかけて台風の影響などで雨が多く、気温の低い状態が続いたので、結果的に収穫は例年より1週間ほど遅めのスタートになりました。シーズンを通じて気候が安定せず、決して簡単な年ではありませんでしたが、スタッフの懸命な努力により、全体的には健全で、豊作、よい品質のブドウを収穫することができました。特に10月中頃からは天候が安定してきたので、シャルドネ、メルローは期待が持てます。

ワイナリーの内部では、所狭しとタンクや樽が並んでいて、発酵中のもろみのよい香りが漂っています。残りのメルローの収穫、仕込み、そして赤ワインの発酵後のプレス(圧搾)など、まだまだ気を抜くわけにはいきませんが、終わりが見えてきたので、少し気持ちに余裕ができてきました。

この2年間は新型コロナウイルスの関係で、収穫ボランティアの方をあまり受け入れてきませんでしたが、今年はすでに50名以上のボランティアの方に収穫をお手伝いいただき、また、地元の方々にアルバイトでお手伝いいただくなど、多くの方に助けていただきました。この場を借りて、スタッフ一同、心から感謝申しあげます。

2022年ヴィンテージのワインは来春以降の発売になりますが、今年のヴィラデストの気候やスタッフの努力を反映したワインを、楽しみにお待ちください!

収穫が始まりました!

いよいよ2022年の収穫が始まりました。まずは、東御市・御堂地区(約3ヘクタール)のシャルドネ。昨年ほんの少し初収穫できましたが、今年は少し増えて300kgほど。来年から一気に収穫量が増えそうです。

910日ぐらいまでは雨続きで、なかなか糖度があがってこなかったのですが、この1週間は晴れて気温の高い日が多かったので、一気にブドウの熟度があがってきました。これから、しばらくは毎日のように収穫、仕込みの日が1か月ほど続きます。

今年は久しぶりに寒い冬になりました。春から初夏にかけても気温は低めで、萌芽や開花は例年より少し遅めになりました。66日に梅雨入りしましたが、6月後半には早くも梅雨があけて、突然の猛暑になりました (でも、その後も夕立が多く、結局、梅雨明けは7月下旬と訂正されましたが)。

ヴィラデストでは、開花の時期に気温が高めで雨が少なかったので、着果は良好でした。7月下旬まで夕立が多くて、べと病の発生しやすい状況が続きましたが、概して気温が高かったこともあり、生育の遅れを取り戻し、結果的には平年並みの収穫時期になりました。

一部の畑ではべと病の影響を受けましたが、今のところ、全体としてみるとブドウは健全です。これから台風シーズンで心配もありますが、なんとかよい天気が続き、よいブドウが収穫でき、よいワインができることを願うばかりです。

収穫、仕込みはこの1年間の畑の集大成です。スタッフ一同、気合を入れて頑張ります!

ヴェレゾンが始まりました!

ピノ・ノワールのヴェレゾン(果実の色づき)が一部始まりました。
ヴェレゾンの前には房周りの葉を取り、房への日当たりや風通しを改善する除葉(じょよう)をおこないました。ただ、あまり強い日光が房にあたると日焼けを起こすこともありますし、房周りの葉は光合成にも重要な役割を果たしていますので、ヴィラデストでは、白ワイン用品種やピノ・ノワールは、垣根の片側だけ徐葉して日差しの強い西側や南側は葉を残し、メルローやカベルネは両側とも取る、という方法をとっています。いずれにせよ、“完全にすっきり”にするのではなく、“中庸に”除葉をすることを心掛けています。

今年は、梅雨は短かったのですが、梅雨が終わってから、連日のように激しい夕立になり、地域全体としては“べと病”の発生が多いようです。ヴィラデストでも被害は出ていますが、一部の畑に抑えられていますので、収穫までのあと一月半ほど好天が続き、健全に熟してよい収穫が迎えられることを期待したいです。
また、獣の食害にも対策が必要ですから、これから電気柵を設置したり、ネットを張ったりといった作業も予定しています。

近年では、異常気象、猛暑、ゲリラ豪雨、大型台風、などという言葉をよく聞くようになりました。地球温暖化がこのような気候変動を引き起こしていると言われますが、ワインづくりにおいては、地球温暖化により雨が増えて病気が増えたり、また、従来その地に適していた品種が、その地に合わなくなってきたりと、地球温暖化の負の影響を大きく受けます。
ブドウ栽培やワイン醸造においては、畑では光合成により、CO2(二酸化炭素)を糖分に固定しますが、発酵の過程や人間がワインを飲酒して代謝する際、また、剪定枝を焼却したりなどしている間に畑で吸収されたCO2は、ほぼ大気中に放出されると思われます。ほかにも、ブドウ栽培に使用する農機具の燃料、醸造機械を動かすための電力、ワインボトルなど容器の製造・運搬にかかわるエネルギー、ワインを熟成させる部屋の空調、完成したワインの輸送に関わるエネルギーなど、最終的には畑で固定する以上のCO2を排出することになります。

今、自動車産業では急速に電気化が進みつつありますが、いずれは農機具も電気化されるようになるでしょうし、畑などにスペースはたくさんありますから、太陽光等の自然エネルギーを使うなどして、ワインづくりでもカーボンニュートラルを目指したいものです。

同時に、将来を見据えて、地球温暖化に対応できる品種を探して、少しずつですが、試験的な栽培を今から始めています。現在、日本に導入されているワインブドウ品種は、世界的に見ればごく一部であり、可能性のある品種は世界中にたくさんありますので、JVA(日本ワインブドウ栽培協会)の仲間とも協力して、有望な品種を探索していきたいと思います。

まだまだ暑い日が続きますが、ヴィラデストではお盆を過ぎると秋の気配が漂ってきます。
収穫までの間に、畑仕事以外にも昨年仕込んだ赤ワインの澱引きやビン詰めなどを行いますが、いよいよ収穫、仕込みにむけて、ワイナリーは準備モードに入ってきました!

 

 

暑さに負けず、頑張っています! ~“自然派ワイン”について考える~

6月27日に史上最短で梅雨明けの発表があり、いきなり猛暑の夏がやってきました。
スタッフもこの唐突な暑さに順応するのが大変な状況ではありますが、熱中症に注意をしながら、ブドウ栽培にとって最もいそがしい時期を頑張って乗り切りたいと思っています。

今年は開花時期に雨が少なく、気温が下がることもなかったので、結実の状況も良好で、ブドウは今のところ順調に生育しています。ただ、このところ毎日のように夕立があるので、病気の発生が心配されるところです。

今回は、ヴィラデストのワインの中では少し異色のワインである「タザワメルロー」のお話をしたいと思います。「タザワメルロー」は、いわゆる、“自然派”とか“ナチュラル”と言われるジャンルのワインです。
2004年に大橋健一さん(現在、日本在住で唯一のマスター・オブ・ワイン)が『自然派ワイン』を執筆されました。その当時は、世界中をみても“自然派ワイン”のジャンルに入るワインは少なく、そのようなワインがあることもあまり知られていませんでした。
私自身、仮にチャレンジしたとしても、雨の多い日本で合成農薬を使用せずに、病気に弱いワインブドウを栽培することは難しいだろうと思っていました。
そのような中、若手の栽培醸造家が毎年1回集まって自主的に開催している勉強会(その会は今も続いています)があり、当時私も参加していたのですが、そこで“自然派ワイン”が話題になったことがありました。また、フランスのいわゆる“自然派ワイン”で、すばらしい品質のワインをテイスティングしたり、現地生産者に実際にお会いして話を聞いたりする機会があり、私もそのようなワインにとても興味を持つようになりました。
そして、ヴィラデストの約0.6ヘクタールのメルロー畑にて、有機栽培に準ずる(有機認証は取得していませんが)栽培を始め、その畑から収穫されたブドウは、自然の酵母で発酵を行いました。それが「タザワメルロー」です。

「タザワメルロー」は2007年が初ヴィンテージでしたが、畑では最初の2年間ほどは、べと病を中心とした病気に苦しめられました。また、殺虫剤も使用できないため、ミノムシが大発生して発芽前の芽を食べられるなどの被害もありました。自然酵母による発酵も、最初はこわごわでしたが、勉強会の仲間と情報交換をしたりしながら、徐々に栽培面でも醸造面でも安定したワインを生産できるようになってきました。
できたワインは、柔らかくて繊細であり、少しオフフレーバーを感じますが、良い意味でこれまでのヴィラデストのワインにはない複雑さを感じるワインになりました。このワインの魅力を感じ、ヴィラデストのファンになってくださったお客様もたくさんいらっしゃいます。
ちなみにメルローを選んだのは、ヴィラデストで栽培している品種の中では、最も栽培がうまくいく可能性が高いと思ったことと、畑の位置が森から離れていて、害虫の被害がもともと少ない畑であったからです。

▲「タザワメルロー」の畑は火山性の黒ボク土だが、礫が多くて水はけはとてもよい

 

それ以来、ヴィラデストでは、この「タザワメルロー」を継続してつくっていますが、「少しオフフレーバーを感じるが、良い意味でこれまでにない複雑さを感じる」自然酵母による発酵の利点を活かすべく、他のワイン、「ヴィニュロンズリザーブ メルロー」や「ピノ・ノワール」でも部分的に自然酵母を導入しています。
ただ、ヴィラデストのワインは、ヴィラデストの美しい風景を映し出すような、クリーンでエレガントなワインであることが重要だと考えていますので、あくまでも培養酵母を主体としつつ、自然酵母はアクセントだと考えています。
また、ワインはテロワールを反映することが価値であると考えますが、自然酵母での発酵は、オフフレーバーが発生しがちであり、それがテロワールを覆い隠してしまうこともありますので、そういうことのないように注意をしています。
一方、「タザワメルロー」をつくる際に、亜硫酸の使用量を減らしたのですが、その経験によって、他のワインも全体的に以前と比べて亜硫酸の使用量を減らすことになりました。「タザワメルロー」をつくることで、ヴィラデストのワイン全体のレベルアップにもつながっているように感じています。

最近は、“自然派ワイン”という言葉はあまり使われなくなってきて、“ヴァンナチュール”や“ナチュラルワイン”などと言われることが多いですが、いずれにせよ、そのようなワインの中には、すばらしく柔らかく優しく、そしてクリーンで複雑さも感じるすばらしいワインもあれば、オフフレーバーが明らかに前面に出てしまっているものもあります。
また、特に日本では、“自然派ワイン”や“ナチュラルワイン”などという言葉について、その明確な定義があるわけではなく、品質も玉石混淆といったイメージです。今後は、ある程度、製法や表示方法などの基準を定めていく必要があるように思います。

さらに、“ナチュラル”というと、何となく環境にやさしいと思われがちですが、必ずしもそうとは限りません。場合によっては、ボルドー液などの散布回数が増えることで農機の燃料を余計に消費することにつながることもあります。
環境に配慮するのであれば、畑やワイナリーで自然エネルギーを有効に活用することや、そもそもその地に適した病気に強い品種を導入することなど、いかにして環境への負荷を少なくし、ワイナリーで働く人はもちろん、周辺の住民にとっても、「サステナブル(=持続可能)」であるかを考えることが、より重要になってくるのだろうと思います。

今回は、なんだか理屈っぽい通信になってしまいましたが、とにもかくにも、飲んで心からおいしいと思ってもらえるワインをつくることが何よりも重要だと思いつつ、今日も畑で草を刈ってきました!